
実家怪談 つのだふむ
先日、確定申告で実家に帰った時に、父がこんな話を始めた。
「寝室に、幽霊が出るんだ。」
突然の怖い話スタートに、僕はぎょッとしたが、父はお構いなしに話を続ける。
「寝ているときに、これまでに三度、肩を叩かれたんだ。お母さんが起こしに来たのかな、と思って目を開けると、誰もいない。確実に、体に触れられた感覚があるのに。」
それを横で聞いていた母が、合わせ技のように話し始める。
「あの部屋、おかしいのよ。私が1人でいるとき、必ず同じ時間にラップ音が鳴るの。」
ラップ音、、、?そんなさらりと心霊用語を言う人だった、、?
と、動揺している僕に、母が畳み掛ける。
「ある日、その音がしたところを見たらね、、、じいじの写真が落ちてたの。」
「それがあってから、部屋にじいじの仏壇を作ったのさ。」
と、なぜか得意げに父が締めた。
、、、たしかに、帰宅したら寝室に手作りの仏壇ができていた。
じいじ(父方の祖父)はだいぶ前に亡くなったのに、急にどうしたんだろうとは思っていたのだ。
なかなか前フリが効いてるじゃないか。
にしても、この話をする2人はまったく怖そうではない。むしろ嬉しそうだ。
あぁそうか、と思った。
こうやって物語にすることで、死んだじいじの近況を話しているような感じなんだ。
多分2人は、僕に話すときに、話を盛って臨場感を出している。
そして、ばらばらの些末な出来事を「祖父が会いに来た話」として、2人がかりで仕上げている。
伝えたいことが決まって、そう組み立てたのだ。マンガづくりと一緒だ。
たいそうなことじゃない、人に伝えたいことを伝えるときに、自然と誰でもやることなのだ。
僕はマンガづくりを、やけに特別なものと思いすぎていたなあと気づいた。
久しぶりに会って、またちょっと年老いたように感じる両親を見ながら、
「人が物語を作るのは、会えない人に会えるからなのかもしれないな」
などと思い、風呂に入って寝た。
という、実家怪談。
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出会いをぜんぶマンガにする、インサイド・ストーリー
出会いをぜんぶ、マンガにする。 自分の生活と、どんな出来事も味わい、マンガにしていくマンガ家の日々の日記と、移住した糸島での暮らしを描いた…
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