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つのだふむ動静2018年6月10日

雨の日曜日。ディズニー後、クタクタな体を起こし、朝ごはんを食べたら早めに実家から帰宅。金曜日に「この原作をネームに起こしてみない?」と佐渡島さんから来た原作書類を読み込み、演出のポイントを探る。赤字でメモを入れたりなんだりしていたらウトウトしてきて、夜まで寝てしまった。
この日のことは、家でだらけていたので正直あんまり書くことがないので、先日西荻窪の「家のない人」に取材した時の「短編」を載せたいと思う。わりと長いけど面白いです。▼

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<家のない人取材0526>

・ぼくはスーパーがどこか尋ねるふりをして、区民館外のベンチに夜中座ってる彼に話しかけた。このあたりにスーパーありませんか?と、近くにあるスーパーがすでに潰れてしまったことを知らないテイで。彼は、スーパーは潰れてなくなったことをぼくに教える。
彼「西荻窪は、再開発の波がきてるといえばきてるよね!その一貫かもしれない」 
 彼は街に詳しく、西荻窪の再開発事情を教えてくる。
彼「北口のすき家とかもなくなったでしょ、あの角の。地価が上がってるから、あそこ高層マンションとかにするんじゃないかな」
彼「もともとは、ここは闇市のところなんだよ。南口のほう、立ち飲み屋、あの辺は闇市の残りなんだよ。」

長くなってきたので、ぼくはそろそろ、彼について聞こうと決断する。

ぼく「ここら辺はながいんですか?」
彼「、、、、うん、、、まあ、、、それなりには、勉強してる」

彼の言葉がよどむ。自分のことを聞かれたくない感。そして彼は再び、再開発の話を続ける。
彼「ちょっとずつ地価が上がってるの。家賃が上がってるの」
彼「新しい店ほど、半年から一年で入れ替わってる。古い店は残る。新しい人が、入ってきてない。西荻自体は」

彼は缶チューハイと弁当で晩酌していて、しだいに気分が良くなってきたようだ。

彼「まあまあ、座って座って。」
ベンチの隣をポンポンとたたく。
ぼくは彼の隣に腰を下ろす。
彼「穴場が、穴場じゃなくなったかんじ。(西荻)」
ぼく「へ〜〜」

、、、、こうしてしばらく、地価が上がってる話、吉祥寺が近いから家賃が上がってる話をし続ける彼。
このあたりに「民泊」が意外に多いことも知っていて、観光の外国人がよくうろついてると話す。
ぼくはふたたび、彼自身の話を聞くために流れを誘導する。

ぼく「すごいですね、西荻のことならなんでも
知ってる、みたいな?」
彼「ただ、人間ウォッチングしてるだけよ」
ぼく「いつもここにいらっしゃるんですか?」
彼「まあまあ、、、(にごす)」

沈黙。
まだそこ触れちゃだめか。

彼「柱をなめると焼き鳥の味がするみたいなさ笑 そういう店が多いからさ笑 新しい店が定着しない」

また街の話。柱をなめると、、の表現が面白い。

彼「演劇とか、ここ(区民館)で稽古してる人もけっこういる。小劇場とかけっこうあるじゃない。このあたりは。だから、こういっちゃなんだけど、貧乏くさいね!意識は高いけど、そんなにはお金は無い人たち多いよね」

お前が言うか。などとは思っていない。
ぼく「西荻窪だけじゃなく詳しい?」
彼「このへん、歩けるから。吉祥寺も歩けるじゃない。北に行けば、西武線。上石神井もすぐだよ」
ぼく「歩けます?上石神井」
彼「まあ、30分はかかるけど。、、、バスもあるから」
彼「こっちいけば荻窪。荻窪の商店街のほう。荻窪に行く人もこの辺通ったりする。」

よし、また彼自身の話に誘導だ。

ぼく「けっこうこのあたり長年いらっしゃる?」
彼「いや、そうでもない。2年、3年」
ぼく「あ、そんなでもないですね」

情報を引き出せはじめた。

彼「人通り、このへん減った。ダイエーがなくなったからね、そこの。そこで酒買って、目の前の公園で花見したりする人もいたんだけど、だいぶ減ったね。」
彼「10時くらいまでライトアップしてたからね。クリスマスと桜のシーズンのときはライトアップするのよ。別にデコレーションするわけじゃないんだけど」
彼「ダイエー潰れたのは、再開発、もしくは耐震かなあ。40年て書いてあったから」
また再開発の話にもどる。
彼「今、新しい建築基準に合わせて、耐震基準に耐えられないのはバッドマークつけられてるんだよね。指導が入ってるらしい。それにひっかかったのかもしれない」

それにしても、やけに建築の話をする。

彼「西荻の北口の角のところ、今の工事の基礎工事なんかをみると、そんなに高く無い、6階建くらいのビルが建つんじゃないな」
ぼく「工事みただけでわかるんですか?」
彼「専門なんで」
ぼく「あ、工事の、、」
彼「いや、デザインの人なんだけど、そういうのも観てるんで」
ぼく「建築のデザイン?」
彼「ぼくはどっちかっていうとお店のデザインが多いんだけど、低予算の基本的な建築デザインはするけどね。採算にあわすように提案もするし」

いきなり彼の情報がどんどん出たきた。まさかのデザイナー?

ぼく「そういう目で街をみてる?デザインとか」
彼「結局はカルチャーだからさ。残るのは。建築物をたてても、使えないものをやってものこんないから。カルチャーっていうか、そういうところにねざすようなものを提案しなきゃ意味ないじゃないですか。」

だからそういうことをふまえてデザインをする、という話だろうか。

ぼく「僕も美大出たんで、デザインて聞くと親近感わきますね」
彼「、、、、、」

なぜか無視。ここで一気に急接近を狙ったのに。話をつづけよう。
ぼく「けっこう町の変化ってみてると面白いですよね」
彼「人口は減ってるんだけどね。」
彼「杉並区って、もともとは金持ちの別荘地帯なんだよね」
彼「江戸時代の終わり頃から、偉い人たちの別荘地帯なの。地主がたくさんいるの。おっきい土地持ったひとたちが、切り売りしてるの今。今地価が上がってるし、引き継いだら遺産の税金がすごいとられるから、みんなちょっとずつ切り売りしてるの。Aという地域があったら三つにとか、細かくなっていくのね。」
彼「だから、すっごいある、細かいところ。これ切り取ったな、っていうとことか。」
ぼく「そういうのデザイナーとして肌で感じるんですか?」
彼「いや、肌ではなくて、それは図書館。意外にこのあたり図書館が多いので」
彼「この先も図書館、こっちも図書館」
彼「そこで資料をみたりとか。古いあれとか見ればわかるじゃない。?不思議だな〜と思ったら図書館に行って調べる。」
ぼく「街の歴史をさかのぼったり?」
彼「歴史はさかのぼんないけど、想像すればだいたいわかるじゃない笑」
彼「なるほどね、昔はこの土地はここでひとくくりだったんだねってわかる」
彼「意外に俯瞰で、地図って俯瞰でみるじゃない。バースオブビューじゃない」
ぼく「えっなんて?」
 彼「バーズオブビュー。鳥の目。俯瞰。」
 ぼく「あー!」
 彼「これって建築用語なんだけど。上から見る。あとはフィールド活動をすればわかるじゃない。それで3Dにすればいいじゃない笑」
ぼく「じゃあ、それでもう街全体を」
彼「いや、なんかへんな作りのところだけを。変態がちょっと入ってるから笑 あれおかしいな、なんでこんななったんだろうなというところを着目して。」
 彼「なんでこんな変な家の立ち方、変な建物ができるんだろうとか。建築基準法とかってあるじゃない。それってガチガチで、それでもなんとか立てようとする家とかマンションがあるじゃない。それでなんでだろうって推理するの。ただ、街を切り取ってるだけなんだけど」
 ぼく「考え方も俯瞰してる。」
 彼「いい歳だから。」
 ぼく「おいくつですか?」
 彼「51だよ。」
 ぼく「若く見えますよ」
 彼「白髪、夜だから目立たないだけだよ笑」 バーズオブビュー>

打ち解けてきた。ここで、再度あの質問。

ぼく「いつもここで飲んでるんですか?」
彼「いつもだいたいここで飲んでるね。よっぽど大雨じゃない限り。」
ぼく「雨のときは?」
彼「雨んときでもここにいるよ?そこそこの雨なら。ここに傘たてとけばだいたいかかってこないから。ここは意外にね、風はまわんないんだよ。ふきつけはこない」
ぼく「ここは、いい場所だと」
彼「いい場所みつけたみないな。鳥の目で。ははは」
彼「西荻窪は、いろんなちっちゃな公園あるんだけど。あっちにも、大麻公園が。」
ぼく「大麻公園?」
彼「ほんとは平和公園ていうんだけど。向こうの線路沿いにライブ小屋とかスタジオある。あいつらが大麻すってるから。ぼくが一人で大麻公園って読んでるんだけど笑」
彼「警察にもなんかネタありませんかってきかれる笑 それで、大麻公園であいつら吸ってたよって教える。」
彼「そういう情報提供しないと、ただ疑われるだけだからさ。だってここでずっと酒のんでるんだからさ笑」
彼「そこで半裸で倒れてた奴を警察呼んで助けたこともあったし」
彼「二週連続くらいでここで別の人間がぐたってしてたから、この辺の飲み屋で強い酒飲ましてぼったくってる店があるのかもしれない」
彼「もともとの出が、いかがわしい町なんで。ぼく。日本じゃないの。香港にずっと住んでたの。」
ぼく「どのくらい住んでたんですか」
彼「10年くらい」
ぼく「国籍は、、」
彼「国籍は日本。」
ぼく「何才くらいのとき?」
彼「30から40。つい数年前までいたね。だからすぐわかっちゃうんだよね。あいつ酒盛られたな、って笑 」
彼「香港、マカオ、タイランド、ってかんじだからさ笑」
ぼく「それで西荻窪ですか」
彼「健全ですよこの町は笑」
ぼく「じゃあ、香港から帰ってきたら、ずっと西荻窪?」
彼「戻ってきてだいたいこの辺だね。クライアントもいるからってのもある」
ぼく「クライアント」
彼「デザインの発注をしてもらって。あと、まだ海外から仕事の依頼があるんで。このベンチで酒飲んで、朝方、家に帰って、依頼の仕事をぴゅぴゅってかいて、はーいってメールおくればチャリンチャリンって笑 チャリンチャリンって入金があるだけなんで」
ぼく「朝方、家で仕事するまで、ここで過ごすスタイル?」
彼「ここはアウトドアとしては非常に優れた環境なので」
ぼく「ここがくつろぐ時間?」
彼「そうそう」
ぼく「何時までいるんです?」
彼「へたすりゃ5じくらいまで」
ぼく「寝るのもここ?」
彼「うつらうつらすることはあるけど。自分でもわからない。トランス状態だから。ははは」
ぼく「毎日」
彼「毎日。それがいいんだよ」
彼「ベッド行ってもさ、寝袋で寝るみたいな。ようはかんたんですよ。身軽ですよ。身軽にしておきたいんですよ。」
彼「寝袋で寝てればいつ追い出されても、寝袋もってればいい」
彼「家なんてね、ものを置いたり服を置いたりする場所は必要ですよ。証明するには家は必要ですよ。でもあとはべつに」
彼「寒くても、べったんべったんはってここにいるからね。意地でも」
彼「こだわりをなくせば人間は身軽になりますよ、相当」
ぼく「ここに来ることだけがこだわり」
彼「あと仕事。仕事やる以外はこだわりない」
ぼく「仕事は日中におわるの?」
彼「終わらせるように努力する。僕はフリーハンドで図面をかくだけだから。そりゃ尺はあてるよ。コンピューターでは絶対描きませんよ、ってお客さんにもいってる」
彼「そういうのは、こういっちゃなんだけど下々の人がかけばいいだけのことだからさ笑へへへ。」
彼「べつに差別じゃないけど、下々がかけばいい。そういうきっちりしたのは」
彼「フリーハンドでかく意味っていうのは非常にあって、コンピューターでかかれた図面をみせられるとクライアントはできた気になるんだよね。イメージがつくられちゃうの。それってひじょうにこわくて、できたときにこれちがうよってはなしになったり。フリーハンドだと、ここはどうなる?っていう質問が生まれやすいんだよね。ようは、クライアントが質問をしやすくなる。そこで説明することによって、逆に血が通ってくるというか。ようは、生きた図面になってくるんですよ。コンピュータの図面っていうのは、素人さんでもこうなるんだ、てできた気になる。でもできると、こんなんだったの?っていうギャップができやすいんだよね。特に家とかお店とかは、使い勝手のいいところがあったりなかったりするじゃない、それが、えーおもってたよりこうじゃなかったのに、ていうのがすごいギャップをうみやすいんだよね。」

めちゃくちゃ良いことを言ってる気がする。

ぼく「みてみたいですね、図面」
彼「、、、、、、」

無視。

彼「ぼくなんかは、図面かいてる段階で、3Dでも店のイメージができた段階でドローイングしていくから、そこにいくまで自由な時間があったほうが面白いことができるっていう話ですよ」
彼「大丈夫?寒くない?」

ここで、時計を見ると40分たっていた。このタイミングで、帰ることにする。
ぼく「すみません、長々と。あ、これよかったら食べてください」

お菓子をあげようとするも「そういうのは自分のために使ってください。ほんとに」

拒否される。

ぼく「いつもここにいますか?」
彼「んー、ほとんどいる」

ぼく「またきます」

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#日記 #エッセイ #漫画家

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